今回から数回に分けて、うつ病の原因についてお話していきたいと思います。
うつ病の発病メカニズムは未だ不明であり、
複数ある説も仮説の域から抜け出せていないのが現状です。
主な説としては生物学的仮説と心理学的仮説があります。
生物学的仮説は、薬物の有効性から考え出されたモノアミン仮説、
死後脳の解剖結果に基づく仮説、
低コレステロールがうつおよび自殺のリスクを高めるとの調査結果、
MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあり、
2013年現在も活発に研究が行われています。
モノアミン仮説のうち、近年はSSRIとよばれる
セロトニンの代謝に関係した薬物の売り上げ増加に伴い、
セロトニン仮説がよく語られています。
また、海馬の神経損傷も論じられています。
しかしながら、臨床的治療場面を大きく変えるほどの
影響力のある生物学的な基礎研究はなく、
決定的な結論は得られていません。
一方、心理学的・精神病理学的仮説としては、
思弁的に提唱したフーベルトゥス・テレンバッハの唱えた
メランコリー親和型性格の仮説が有名です。
これは、几帳面・生真面目・小心な性格を示すメランコリー親和型性格を持つ人が、
職場での昇進などをきっかけに仕事の範囲が広がると、
責任感から無理を重ね、うつ病を発症するという仮説です。
しかし、このような生活上の悩みがうつの原因になるとしても、
すべての症例がこの仮説によって説明できるわけではありません。
例えば、家族の一員の死により深刻なうつ症状に陥る人もいれば、
短期間で乗り越える人もいます。
一方で、特段の理由もなく深刻なうつを発症するケースもあります。
メランコリー親和型性格の仮説は統計データなどの根拠には基づかず、
あくまでも思弁的な仮説になります。
臨床現場では抗うつ薬を投与することで
セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを促す治療が行われていますが、
あくまで対症療法的なものであり、
成因の解明は新たな治療薬の開発に役立つことが期待されています。
次回は、各仮説について解説していきたいと思います。
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